So-net無料ブログ作成
検索選択

「『私はひとりでいたいのです』-それでいいんですかね?」冨田富士也(子供教育フォーラム代表)(『月刊少年育成』連載 せめぎあっておりあっておたがいさま より) [読書記録 教育]

今回は 6月23日に続いて 休刊となった『月刊少年育成』誌の連載記事より、
冨田富士也さんの「『私はひとりでいたいのです』-それでいいんですかね?」
を紹介します。


冨田さんは、自分では気が付かない「考えさせる話題」を提示してくれます。




『月刊少年育成』連載記事の名前は「せめぎあっておりあっておたがいさま」。
「おたがいさま」の感覚の大切さをこのごろ強く感じ、『月刊少年育成』誌の復刊を強く
望みます。







<浜松の新名所 浜松ジオラマファクトリー!>

ものづくりのまちとも言われる浜松。
 山田卓司さんのすばらしい作品を 
 ザザシティ西館の浜松ジオラマファクトリーで味わえます。
 お近くにお寄りの時は ぜひ お訪ねください。
浜松ジオラマファクトリー



☆「『私はひとりでいたいのです』-それでいいんですかね?」冨田富士也(子供教育フォーラム代表)(『月刊少年育成』連載 せめぎあっておりあっておたがいさま より)

1.jpg

「人はどうして、一人で生きることがゆるされないのですか」
 


 中三のA子さんは毎日、学校には通っているが、いつ不登校を宣言するか「予断をゆるさない」状況にある、と両親はいう。


 その彼女が最後に両親、とくに母親に詰め寄る言葉がこの″フレーズ″である。


 母親はそのたびに黙ってしまう。以前は必死にA子さんに喰いさがっていた。

「一人じゃ生きられないの」

とA子さんに言えば


「本人がそれでいいといっているんだからいいじゃないの」

と母親はA子さんから押し返えされた。


「勝手なことを言わないの。自分の都合通りに人が動いてくれないからといって。そんな
 言い方こそゆるされないのよ」


と母親が怒りをもってA子さんに体当たりしていくと再びいつもの″フレーズ″がつぶ
やかれる。


 そしてなにかに自信を失くしている娘の気持ちを察すると母親は黙っているしかない。


 すると彼女は登校する。しかし出掛けた後の母親の気持ちはすっきりとはしない。 


 友だちのできない悔しさをただ言いたいだけなのではないか。


 もしかしたら母親としての責任ある怒りと思い言っていたことが娘にとってはすべて押
しつけになっているのではないか。


 だとしたら娘の心を追い詰めるために黙っていることになりはしないか。




 そんな母親の困惑ぶりをみかねた父親が、

「親や先生ではない第三者の人に聞いてもらうこともいいかもしれない」

とA子さんを誘い私の相談室に二人で訪れてくれた。



「今日は娘の話を十分に聞いていただきたいと思いますので…」

 父親はそう言うと話のリードを私にあずけてきた。


 私はうなずきつつA子さんの様子をうかがい問いかけた。


「いきなりふられても困るよね。ただ少しお母さんも疲れているようだね」


 A子さんはおとなしさと共に自分の気持ちを正直にうちあけることを抑制しているよう
な戸惑う話し方だった。


「私は毎朝、学校に行くことがつらくてつらくて心は家にへばりついているんです。だか
 らそんな私を学校に送り出す母もつらいと思います。迷惑のかけっぱなしです」


 父親が口挟む。


「迷惑ということはないよ。休んだ方がよければ休んだ方がよい。休まなくても行けるよ
 うなら行った方がいいとお母さんもお父さんも思っているんだ」


 A子さんは父親の話に抵抗する様子はなく首を軽く上下にした。


 私はとつとつではあるが話せば一区切りつくまで話せるA子さんだったので父親より
も彼女に顔を向けた。


「3年生になってクラスが変わり、それまでずっと仲の良かった友だちと別れてしまいま
 した。それでも友だちをつくることに努力しました。自分から気をつかわなければ仲間
 に入れてもらえないのですこしみじめな感じもしましたが、できました。やっとできた
 友だちなので自分の責任で壊したくないと思い、気はすり減るほど毎日つかってきまし
 た」


「みじめな感じっていう風に受けたんですね」
 

私は、「そんな受けとめ方でいいのですか」というニュアンスを込めながらたずねた。


「プライドが高いのですか、私は。最初に友だち関係を作るときはどちらかが相手にあわ
 せていくからできるんですよね。弱者が強者にあわせていくんですよね。私は弱者です。
 だからみじめなんです。でも堪えてやりました」
 


 彼女の話を聞きながら私は腹が立ってきた。もちろん腹の立つのは私の問題だから、そ
の感情を落ちつかせ(整理して)なんらかの気づきの擾助になる返し方が私に求められて
いた。


「ちょっとこんな言い方は理屈っぼいけど、友だち関係ができたとしたら、それは相手の
 方もあわせる努力をしてくれたからこそ、じやないのかな。かりにA子さんがこびて
 友だちになったと相手の子がたまたま噂で聞いたら悲しいだけではなく、腹も立つと思
 うよ」



 独り善がりになるとどうしても傲慢になりやすい。表情の気の弱さにくらべて内心では
素直になれない頑固さに苦しんでいる子はバーチャルな人間関係に包まれているこんな時
代だからこそ多い。


「先生がクラスで二人組みをつくらせて授業をしたりしますが、いつも余るのは私です。
 どうして一人でいさせてもらえないのですか」


 A子さんは自分の課題と向きあいつつあった。相手に対し、心のなかでいくら気をつか
っても行動化しないとその真意は伝わりにくい。


 しかし行動を起こすには拒否されたり、否定されるような傷つくリスクを覚悟しなけれ
ば一歩踏み出せない。


 実は安易に人間関係というがそこには互いがその重みを自覚した関係があればこそ果た
せるものである。「一人でも生きていける」と言う人がいるがそれはこの責任ある関係か
ら逃避する ″強がり″である。


 やっとA子さんから素直な思いがこぼれた。           


「どうして一人でいると寂しいのですか」


 言葉に頼るのではなく日々の暮らしのなかでこの答えがみつかることを今の子どもたち
は求めているにちがいない。



 親が子に話し、たずねることといったら勉強と成績のことだけ。

 それでいいのでしょうか。
(『少年育成』2003.5)

nice!(136)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学校

nice! 136

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この記事のトラックバックURL:
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。